江戸城は、外濠と内濠に囲まれ、しかもそれらの濠が武蔵野から引かれた上水道によって、江戸市内の緑地と結ばれていたために、水と緑のネットワークの拠点であった。そして現在の皇居には、貴重な自然環境が残っていて、東京の肺として、大都市に呼吸させている。
故昭和天皇は、植物学者であった。現天皇もたいへん植物に対して造詣が深いといわれている。
昭和天皇のご発意によって、昭和58年から60年にかけて、二の丸跡に、武蔵野の雑木林が復元された。また本丸跡においても、随所に武蔵野の野草が植栽されている。
現在皇居には、蝶やトンボをはじめとして、多種類の小動物が生息しているが、その基盤となっているのが二の丸を初めとする武蔵野の植生である。
現在の皇居は、武蔵野生態系の拠点である。皇居の周辺ビルの屋上などに武蔵野の植生が復元されれば、蝶など飛行昆虫が行き来して、生息域を広げることができる。生態系から見た首都東京の環境戦略は、小動物を孤立させずに、生息域を拡大することである。
昭和天皇は、二の丸に武蔵野の雑木林を復元することによって、東京の生態系回復の種子を播かれた。