■ 限界集落の挑戦
福島県石川町中田の山田集落は、4軒が2011年大震災後に3軒となった限界集落だ。
しかし僅かな住人の高齢者が1万本のスイセンを植えるなど、集落を未来に繋ごうとしている。
私の実家はここにあり、主宰するNPO法人ふくしま風景塾が福島県サポート事業チャレンジ枠の支援を得ながら、山田集落で新里山ビジネス「やまびこテラス」を起業している。
まずは景観づくりのために、2019年11月1日高さ8~9mの大シダレザクラ3本を植栽したが、これに元気を得たのか、同月2日から86歳の父をリーダーにした集落の高齢者たちが2万本を目指してスイセンを植え始めた。
やまびこテラスの事業計画は3年。1年目は景観整備、2年目は希少山菜や伝統野菜などの特産品開発、3年目はSATOYAMA to dining(里山の恵みを食する)。
やれることからやる、やれることは絶対にやる。
■ 国際ランドスケープワークショップ
【1日目】
11月9日~11日、NPOふくしま風景塾は、千葉大学大学院園芸学研究科留学生プログラムと連携して、国際ランドスケープワークショップを開催した。
初日は、古殿町のNPO法人馬事振興会の協力を得て、ミニ人馬ウォークラリーを実施した。石川町中田の二本ブナは360度の大パノラマを眺望でき、その周辺はかっての馬産地で、軍用馬を訓練した「養駒運動場」などの遺構が残り、私たちはこれらを巡る「中田トレイル」として整備している。
この実施にあたっては、福島県中農林事務所、石川町、水谷工業株式会社の支援を得た。
【2日目】
2日目は、地域住民との交流会。
留学生たちの多様なアイディアの実現を、地域の造園や林業などのエキスパートが支援した。グローバルなデザインと日本の伝統技術のコラボは、まさに国際ワークショップの醍醐味だ。
焼き芋や豚汁、芋煮を食べながら歓声の中での実習だった。
塩田金次郎石川町長・二瓶義男副町長、JCいわき石川青年会議所、廃校活用を担う(一社)ひとくらす、中田郷活性化委員会婦人部コピア、中田造林組合、野木沢自治センター長、岩瀬農業高校教員、NPOふくしま風景塾、仲田種苗園、そして私の高校同級生の役場職員が「焼き芋担当」課長として参加してくれた。
【3日目】
ワークショップは「やまびこテラス」敷地内3か所で実施しました。
Site 1は、やまびこテラスの園路制作。「粗朶柵工」、わたしたちはシガラミと呼ぶ、自由度が高い土木技術です。
Site 2は、妖精の森のエントランス。この地域の地質である変成岩を使って、延段(のべだん)という日本の造園技術を活用しました。
Site 3は、樹齢60年の柘植の杜(ただしくはイヌツゲ)。ディズニーランドのようなワクワク感を期待しましたが、仕上がりはそれ以上でした。生木を柱にした木柵はユニークですが、結束は造園の「いぼ結び」。
このプロジェクトを助成している福島県県中地方振興局が視察に来て、留学生たちの発想の豊かさに驚いていました。
■里山園芸民泊
千葉大の学生たちは、男子はやまびこテラスにある里山園芸民泊、女子は民泊「農家カフェやぃこばーちゃん」とホームスティ2軒に分宿した。
里山園芸民泊は、全員参加型。
野菜は目の前のキッチンガーデンから調達。
夕方から開店する居酒屋の調理はお客さん全員が交代で。
それでもお代はしっかりいただいています。
■ アグリツーリズモ
福島県石川町中田区は、宅地.田畑.山林が谷ごとに点在する散居という中世以来の居住形態を示す。一軒当たりの所有面積は平均10ヘクタールで、農業観光で注目されているイタリア.トスカーナ地方と似ているかも知れない。
食で注目されるアグリツーリズモも景観保全や再生と密接に連動している。
農業生産法人(有限会社)仲田種苗園のミッションは、里山園芸民泊をプラットホームにして、美しいと美味いを繋ぐこと。
■ウッドデッキの建設
福島県石川町中田の山田集落は、6500万年前に貫入した花崗岩帯に立地し、近くに戦国時代の城館跡があるので遅くともその頃までには成立した。
江戸時代以降は、内陸部と沿岸部を結ぶ山街道が通った。官営ではないようだが、この辺には自生しないエノキを植えて一里塚的に街道の道標とした。
私たちは福島県サポート事業チャレンジ枠の支援を得ながら、限界となりつつある山田集落で新しい里山ビジネスに挑戦している(「やまびこテラス」プロジェクト)。今年度の主な事業として、「一里塚」にウッドデッキを建設した。高低差があり、また樹木の根を傷つけないという厳しい条件の中で、地元の匠有松工務店が素晴らしいデッキを完成させてくれた。
■希少山菜栽培
元石川自治センター長の川西正昭さんは、過疎地の活性化に貢献するために、希少山菜の栽培を研究している。
私たちNPO法人ふくしま風景塾は、この理念に共感して、川西さんを理事として迎え、やまびこテラスで共に希少山菜の生産に取り組みことになった。
共に目指す目的は、地産地消による過疎地の活性化。