■ 奇跡の地

長瀬敏郎東北大学准教授によれば、石川町は鉱物にとって「奇跡の地」である。
ペグマタイトはマグマが地球の中から噴出する過程で発生した残液で、それが地表ぎりぎりのところに残るのは天文学的な確率で稀(まれ)なこと。
石川町の鉱物は、日本最大級価値をもつ鉱物産地。
1 鉱物の種類が豊富(155種)
2 鉱物の結晶が巨大
(石英巨晶帯、長石巨晶帯、電気石・石榴石・白雲母帯)
3 希土類元素やレアメタルを主成分とする鉱物の産出

石川町の古民家を「文化の結節点」と評価した中村琢巳東北工業大講師と同様に、学問が地域に勇気を与えてくれる。

■ 長瀬先生の講演 2017年8月20日
福島県石川町は、日本を代表する鉱物の地。東北大学の長瀬敏郎准教授からは、郷土の地球規模的価値を分かりやすく、解説していただいた。
真の学問は、地域に勇気を与える。

 

■ 地球を語れる郷土の地質

先カンブリア時代(5億年前)、中国南部の揚子地殻が中国北部の中朝地殻に衝突した超衝撃で、揚子地殻がちぎれて、東に移動したのが日本列島である。それを示すのが、石川町から古殿町に分布する竹貫変成岩だ。
ジュラ紀(2億年前)に、太平洋プレートが日本列島に沈み込み、海底が隆起して、竹貫変成岩に覆いかぶさった。石川町から古殿町、いわき市西部に分布する御斉所変成岩だ。
白亜紀(6000万年前)、日本列島に超大規模な火山活動があり、西日本から東北にかけて花崗岩が隆起した。花崗岩の隙間に、稀に希少鉱石が発達するのが、ペグマタイト。石川町はその希少鉱石のサイズが他の地域のペグマタイトよりもけた違いに大きく種類も多いので、日本最高のペグマタイトだと長瀬敏郎東北大准教授が評価する。6月には、アメリカの超名門イエール大学地質学科が見学に訪れている。
このように福島県石川郡は、地球の躍動、日本列島の誕生を知ることができるので、高校地学の教科書にものっている。歴史もそうだが、市町村を超えてせめて郡単位でないと、価値が矮小化して、つまらなくなり、観光やまちづくりのアッピール度が弱くなる。石川郡は「(私認定)世界自然遺産」だ。ぜひ地質のイエール大学や東北大学を交えて、ランドスケープの国内外の大学と、Earth Workshopをやってみたい。
ペグマタイトの電気石 石川町和久観音山

御斉所変成岩の露頭 いわき市石住

御斉所変成岩と竹貫変成岩に挟まれた花崗岩帯

■東北の詩人と鉱石

宮澤賢治は地質を専攻し、晩年は東北採石工業の技師であつた。生前は無名であった宮澤を再評価した福島県出身の草野心平は、鉱石が好きで、親交があった冒険家植村直己から極地や高山の石が贈られている。


■ 鮫川石
福島県鮫川から産出された青石として、庭石としてはブランド品だ。
実は、1億5千年前にジュラ紀に、海底火山の堆積灰が、太平洋プレートの沈降の圧力によって、隆起したものだ。地質学的には、熱と圧力の影響が比較的弱い緑色片岩(いわき市遠野域)と、それが強い角閃石(古殿町域)がある。

地層屈曲の折り返し いわき市遠野
御斉所変成岩の緑色片岩 いわき市遠野
「鮫川石」(角閃石) 南條庭石店(石川町)

■ 1億年前の地層
福島県いわき市遠野にジュラ紀地層の露頭。
緑色片岩(海底火山灰起源)と黒色片岩(海底泥起源)のコントラストが見事。

1憶5千年前のジュラ紀に海洋プレートの沈降によって、海底の堆積層が隆起、その際の比較的低温低圧力によって形成されたのが「片岩」。さらに6千年前の白亜紀に大規模な花崗岩の貫入によって高温高圧によって変成されたのが「片麻岩」。


■ 太平洋プレート圧力の紋様
日本列島海溝の地層が、東からの太平洋プレートの沈降圧力によって、アコーデオンのように折れ曲がる。その模様が、地域の地層に見える。まさにジオパークだ。

御斉所変成岩 いわき市遠野

矢造変成岩 石川町中田 稲荷神社

御斉所変成岩 いわき市遠野