環境戦略 生物多様性を通して地球の緑化を考える 仲田種苗園

モミジサミット

世界のモミジ研究者が集まった

モミジサミットは、国際モミジシンポジューム(国際モミジ協会と日本植木協会が共催)の見学会に併せて、NPO法人ふくしま風景塾(理事長仲田茂司)が、2008年11月15日に開催したものである。 参加者は、海外7カ国65人、国内25人、計90人であった。 会場は、有限会社 仲田種苗園の沢田・鷹巣両農場(福島県石川町)、中畑農場(矢吹町)、青生野ガーデン倶楽部(鮫川村)を中心とし、周辺植生も観察見学した。

参加者(青生野ガーデン倶楽部、仲田種苗園鮫川農場)

参加者(青生野ガーデン倶楽部、仲田種苗園鮫川農場)

海外からの参加者は、イギリスやアメリカを中心とした国際モミジ協会の会員で、同協会副会長のシャロン・ネルソン女史、アメリカ合衆国立樹木園リチャード・オルソン博士(30代の新進気鋭)、ポーランド国ロゴウ植物園長ベネチェック博士(偉いけれど若い)など、世界を代表するモミジ研究者や愛好家が集まった。

日本側参加者は、首都圏の造園家や石川町と鮫川村の地域づくり担当課長などであった。

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前夜祭

11月14日、福島県石川町母畑温泉で前夜祭を行った。地元の加納武夫石川町長には、挨拶だけでなく、全員に酌をしたり、鍋を取り分けたりと、接待していただき、主催者側としては、感謝感激であった。なお、通訳は石川町教育委員会のご高配により、町の英語助手のガリレオ・ユセコさん(男性、オーストラリア)とアレクシス・ダニエルさん(女性、アメリカ合衆国)の援助を得た。

加納武夫石川町長

加納武夫石川町長

手前が仲田彩花、隣はガリレオさん

手前が仲田彩花、隣はガリレオさん

(左)仲田茂司 (中央)小林隆行さん

(左)仲田茂司 (中央)小林隆行さん

 

圃場見学

見学会は、仲田種苗園が経営する4農場(中畑農場、鷹巣農場、沢田農場、青生野ガーデン倶楽部)を巡回する形で行われた。
折しも、紅葉が見ごろで、「エクセレント」の歓声が飛び交った。またさすが各国のモミジ研究者の集まりなので、コハウチワカエデの同定など専門的な質問がたくさんあった。

07中畑農場(矢吹町)

コハウチワカエデを中心とした「あぶくまコレクション」を見学。

08鷹巣農場(石川町)

カラマツの林床に植栽されたイロハモミジ、ハナノキ、オオモミジの多彩な紅葉に感嘆の声があがった。

09鷹巣農場

カナダ人の植物学者夫妻。他の見学者よりは、目線が低く、足元の野草を熱心に写真撮影。

10鷹巣農場

オオモミジの黄葉とイロハモミジの紅葉のコントラストが美しい。

11沢田農場(石川町)

カナダ人夫妻、イロハモミジの紅葉にご満悦。

12青生野ガーデン倶楽部(鮫川村)

10ヘクタールの敷地に、モミジのシンボルツリーが多数管理されている。多くの海外の参加者が、「とても美しく素晴らしい農場」だと評価した

13青生野ガーデン倶楽部

海外参加者の興味は、多岐にわたった。根巻きを見ては日本人の器用さに驚き、モミジの単価の根拠など、商売上の専門的な質問もあった。

14青生野ガーデン倶楽部

海外参加者は植物学者も多いだけに、モミジだけでなく、園内の植物全体に興味を示した。コケについて、熱心に質問する男性もいた。

周辺の植生調査

久慈川の支流渡瀬川は、およそ標高500mを境にして、川を下るごとに、オオモミジからイロハモミジへの移行が認められ、モミジの典型的な垂直分布を示す。
モミジサミットの最終行程である植生調査は、渡瀬川の源流にある青生野ガーデン倶楽部から川沿いにバスで下りながら行った。

15渡瀬川流域(標高約530m地点)

海外の見学者が里山の植生を見たいというので、バスを止めた。
この辺りは植生が良く残っていて、若手の植物学者であるオルソン博士(USA樹木園)やベネチェクト博士(ポーランド植物園園長)などは、失礼ながら、山猿のごとく、俊敏に山中に入り、観察に夢中となり、なかなか帰ってこなかった。
この地点の植生樹木は、以下の通りである。

オオモミジ、コハウチワカエデ、イタヤカエデ、クリ、サワシデ、アカシデ、ブナ、ミズナラ、マンサク、リョウブ、ウグイスカグラ、ヤマブキ、ツリバナ、ヤマツツジ、ムラサキシキブ、ウツギ、コマユミ。春には、草本として、カタクリ、カンゾウ、イチリンソウが見られる。

今回のモミジサミットの最大の成果は、実は確かに、モミジは日本を代表する樹木であるが、海外の人を魅了するのは、それ以上に日本の植生の豊さであるということを認識できたことである。もちろんモミジが、その中で重要な要素であることは動かないが、それだけを取り出すのではなく、植生の中でこそ本来の美しさや魅力を発揮する、ということをあらためて認識した。

16渡瀬川流域(標高450m地点)

オオモミジに代わって、イロハモミジが優占してくる。

17渡瀬川流域江竜田の滝(標高400m)

モミジサミットのクライマックスは、江竜田(えりゅうだ)の滝で締めた。イロハモミジは程よく紅葉していた。この滝は、大小の滝があり、あまたの庭園の滝石組の造園や設計に精通した日の造園家達も感嘆の声をあげた。また、海外の参加者からは、最後の「エクセレント」の感想が飛び交った。

まとめ

福島県は、北系の植生と南系の植生が交差するところである。イロハモミジの北限であるなど、日本国内でもモミジの種類が多い地域である。また国指定天然記念物「中釜戸の枝垂れモミジ」(イロハモミジの変種、いわき市)やコハウチワカエデの枝垂れ変種である「関の華厳」(白河市)などの変わり種も自然の中から見出されて、園芸的な活用も図られている。

(有)仲田種苗園は、創業以来40数年にわたって、この地域の在来モミジの生産を行ってきた。今回のモミジサミットにおいては、当社の圃場を見学していただき、海外の参加者からは、モミジの生態に適った栽培方法、生産規模などについて、高い評価をいただいた。
また、モミジサミットに参加した海外の方々を魅了したのは、モミジだけではなく、日本の植生の豊さと美しさであった。私たちも、モミジを植生から孤立させるのではなく、モミジを重要な要素とした植生の造園的活用をあらためて研究する必要があろう。

文責 仲田茂司

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