阿武隈山地は、花崗岩を基盤としているため地震に強い。この度の東日本大震災においても、阿武隈山地の裾野にある市町村は、揺れはしたが、大きな被害は少なかった。

私は、阿武隈山中の標高500m近い集落で生まれ、育った。阿武隈山地は私の原風景である。このシリーズでは、阿武隈山地の所々に隆起した山のいくつかを紹介しようと思う。それぞれの植生に個性があり、また歴史があって面白い。

まず最初に紹介する蓬田岳は石川郡平田村にあり、標高952m、別名「平田富士」と称される阿武隈山地の秀峰である。アマチュアカメラマンが選ぶ東北百名山に選定されている。

蓬田岳の植生上の特色というか面白みは、シデ類の巨木が多いことである。登山道を登り始めるとすぐに、高さ10mを超えるアカシデ、イヌシデ、クマシデがに天に向かって競っている姿を見ることができ、見事である。シデ類は一般的にはケヤキやブナと違って巨木になることは少なく、しかもこのように巨木が群生しているところを私は見たことがない。

頂上付近のブナとミズナラの混交林の林床では、ヤマツツジの赤とミツバツツジの紫が美しく調和しながら咲いていた。清々しく、しかも艶やかである。

頂上には猿田彦を祭った菅船神社がある。猿田彦は、道びらき、開拓の神である。菅船神社は、阿武隈川東側の郡山市田村町から平田村にかけて4〜5社が分布する。鎌倉〜南北朝時代にこの地方を治めていたのが、守山城主田村庄司氏である。同氏が、領地の開拓を祈願して、蓬田岳山頂に菅船神社を開設したのではないかと私は想像している(仲田茂司)。

yomogi2.jpgyomogi3.jpgアカシデの巨木、高さ15m・幹週3m(目測)

yomogi4.jpg頂上付近のブナ

yomogi5.jpgミツバツツジ(紫花)、ヤマツツジ(赤花)

yomogi1.jpg猿田彦を祭った祠