南北朝時代(1336〜1392)は、阿武隈山地の2つの山城が日本史上に登場する。霊仙(福島県伊達市)と宇津峯(福島県須賀川市、郡山市)である。南北朝時代とは、鎌倉幕府に代わって武家の棟梁を目指す足利尊氏と公家の統治に戻そうそうとする後醍醐天皇の抗争に始まり、足利方の京都北朝と後醍醐天皇方の吉野南朝が戦った時代である。

陸奥守北畠顕家が南朝方であったために、東北南部は南朝方の拠点となったが、北朝が盛り返して一進一退の状況となった。ちなみに顕家は、1337年霊仙に陸奥国府を一時置き、義良親王(のちの後村上天皇)を奉じた。

宇津峯は標高677m、福島空港の近くにある。鎌倉から南北朝にかけては南朝方の有力武将守山城主田村庄司氏の支配下にあった。1352年、北畠顕家の弟顕信(伊勢国司)が、地元の田村庄司氏の援助を受けて、後醍醐天皇の孫守永王を奉じて宇津峯に籠ったが、翌1353年北朝方の攻撃に抗しきれず撤退した。

現在山頂付近に土塁が残り、顕信や守永王が籠った山城の一端を偲ぶことができる。植生は近隣の里山と類似するが、過去になんどか公園化が目指されたようで、参道や頂上の一部にソメイヨシノが植栽されている。

utsumine1.jpgutsumine2.jpg山頂付近の土塁

utsumine3.jpg 山頂から望む福島空港