福島原発の放射能は、事故当初に比較すると放射能濃度が下がりましたが、依然として予断を許しません。

昨日原子力安全委員会の被爆量予測が発表されました。放射能の影響は風向きや地形に影響されます。当社が所在する福島県石川町は原発から60キロ離れており、また原発の方向からの風が少ないために、この1週間は0.35マイクロシーベルト内外と低いレベルで安定しています。

放射能が不気味なのは、原発周辺の放射能は低くなりつつあるのに、周辺に拡散する傾向がみられることです。これも風向きや地形の影響を受けて、一律ではありませんが、茨城県中北部などでは石川町よりも高い数値を示しています。

さらに問題は風評被害です。政府は福島の牛乳や野菜を出荷制限しました。福島県は浜通り、中通り、会津の3地域がそれぞれ関東では1県規模に相当する広域県です。しかも原子力安全委員会が予測したように、放射能の影響は一律ではありません。ところが政府は福島県をひとまとめにして出荷制限しました。「福島」は今や逆ブランドとなり、あらゆる作物、商品、そして「宿泊拒否」やタクシーの「乗車拒否」など人までも風評の被害を受けています。全く問題がない放射能レベルの石川町で生産し、当面人体に影響があるとは思えない当社の緑化商品でさえ、ごく一部には風評の被害が及んでいます。当社の緑化製品は、公的機関による放射能測定結果を参考にするならば、筑波産の芝生と同程度に安全です。

風評によって、原発から30キロの屋内退避圏はもちろんのこと、南側のいわき市と北側の相馬市・南相馬市には支援物資が届かず、一部には餓死の可能性すら指摘されています。これは国際的レベルの人道問題です。

福島原発の電気は100パーセント首都圏に送電され、福島では使われていません。すなわち受益者は首都圏の企業と住民です。ところが事故による被害と風評差別は福島に集中しています。徳川幕府に忠義を尽くしたために、戊辰戦争で西軍の集中攻撃を受けて敗れ、当時未開であった青森の下北半島への移住を強いられた会津藩以上の無念さを福島県民はもっています。

 石原東京都知事は、昨日福島県を訪れ、次のように談話しています。「福島に罪はない。福島には大きな恩がある。東京の経済や生活は福島の電力で成り立っている。震災、原発と多くのものを背負わされた県は他にない」。

石原知事この談話にちょっぴり溜飲を下げた福島県民は多いと思います。しかし、石原知事は原発推進派でもあります。もう二度と福島県は原発を受け入れません。

また先ほど述べたように、放射能は濃度は下がる傾向があるとはいうものの、影響を受ける地域が拡散しています。風評被害は福島県だけでなく、関東地域に及ぶばかりか、日本に対する国際風評に発展するのは確実です。もちろん原発そのものを封じ込めることは緊急の国家課題ですが、風評被害の克服は国民全体の課題です。

 

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放射能の測定値   マイクロシーベルト/時間    
           福島県石川町 栃木県那須町 茨城県北茨城市 茨城県つくば市
3月21日     0.36       0.61        1.82         0.66
3月22日     0.38       0.57        0.57         0.44
3月23日     0.38       0.56        0.56         0.43
3月24日     0.31        0.47           0.47           0.41
3月25日        0.31          0.46          0.46            0.36
             (つくば市のデータは他に合わせて駐車場での測定値)

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26-3.jpg相馬市から南相馬市(旧原町市など)にかけての浸水地域。国土地理院(3・25 朝日新聞)。この地域は、地震と津波によって大きな被害が出たが、風評被害によって物資が届いていない。