仲田種苗園が自然樹形アカマツを生産している白砂青松ガーデン(玉川農場)の面積は2ヘクタール。

阿武隈高原道路の母畑石川インター近くに立地します。もともとこの地は、「青井沢松」として建材アカマツのブランド品でした。

■ 白砂青松ガーデン

■ 癒しの空間

白砂青松ガーデンは一般公開していませんが、お客様は「癒される」とわざわざ湘南から4時間かけてくる方々もいます。

8人、木の画像のようです

写真の説明はありません。

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■ 地質

白砂青松ガーデンは、1億年前の変成岩に6千万年前の花崗岩が貫入して、しかもその境が明瞭にわかるというように、地質学的に重要な場所です。

上の写真のピンクが花崗岩、紫色は変成岩。

上の写真の左白いのが花崗岩、右青いのが変成岩。

■ 葉性が細かく、柔らかい樹形

白砂青松ガーデンの地質は、無機質の花崗岩と変成岩土壌です。この地質が、アカマツを厳しく育て、葉性が細かく、節間が短い、柔らかい樹形を育成します。

■ 崖上の松

崖上の松は、古来日本や中国の絵画に描かれて、また盆栽などのモデルとなってきました。

福島県伊達市霊山には奇岩に生えるアカマツが、まるで水墨画のようです。この地質は、山頂尾根付近と東側の一帯は,新生代新第三紀中新世( 約1.6千万年前頃)の「玄武岩」溶岩や同火砕岩(凝灰角礫岩など)で覆われています。アカマツは直根が伸びることができず、脇根を長い年月をかけて伸ばしているために、成長が遅いです。

地質ポータブル「 福島県:霊山など,地質による地形の違い(玄武岩と花崗岩)」

凝灰角礫岩

凝灰角礫岩上のアカマツ。方向性があり、車枝がない。

文人松

双幹、枝に強弱があり躍動的。枯れ枝の神も美しい

方向性があり、車枝はなく、枝の出に強弱がある

凝灰角礫岩上のアカマツ。方向性があり、車枝がない。

方向性があり、枝の出に強弱があるが、一部の車枝を解消すれば絶品になる。

■ 剪定

福島市ぼんさいや「あべ」の先代阿部倉吉は、吾妻山に自生する五葉松を手本にしながら、自然風盆栽を確立しました。その著「五葉松盆栽の作り方」を参考に、霊山などのアカマツを観察して、私なりに剪定の原則を作りました。

1 「方向性を出す」。アカマツの芯をカットして、方向性を出します。左右どちらに方向性を出すかは、幹のわずかな曲から判断します。

2 「車枝を解消する」。アカマツの若木は、上から見ると幹から5~6本放射状に枝が出て車輪のようになっています。しかしアカマツは陽樹なので、上枝と重なって日蔭になる下枝は枯れます。それが往々にして、大事な枝だったりします。車枝を整理して、すべての枝に日が当たるようにして、将来的な樹形を見越しながら、グレードアップします。

3 「枝の出に強弱(長短)をつける」。阿部倉吉も強調しているが、仕立物のように丸や四角に作らず、枝の出に強弱をつけます。

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4 「鉈切り」。アカマツや五葉松は幹元ではなく、枝の途中から折れる性質があります。残った枝に松脂が充填して腐食の進行を止め、また時間が経過して皮がむけて白くなると古木の風格が出ます。剪定で幹元から枝を切ると、そこから腐食が進行して空洞をつくったり、病害虫が侵入します。

南会津町指定天然記念物 下塩江五本松の神

盆栽では、剪定の際に途中から枝を切り、残った枝を神(じん)と言って大事にして、数年後には皮を剝いたりして、古木感を出します。私たちは、少し大きくなったアカマツの不要枝を鉈で荒らしく切って、神を作ります。

鉈切り

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■ 松くい虫対策

松枯れは、マツノマダラカミキリが媒介するマツノザイセンチュウが幹内に入り仮道管を塞いで水揚げを不能にさせることが原因です。

私たちは、三重県の樹木医石黒秀明さんの指導により、松くい虫対策を行っています。

石黒さんなどの研究によれば、マダラカミキリは産卵する時に幹をかじり、その際にセンチュウが侵入します。また強剪定など大きな傷口ができると、「松脂フェロモン」が拡散して、周囲数キロのカミキリを呼び込みます。

そこで私たちは、5月から10月までの産卵期には間伐はもちろん、強剪定はしない。どうしても必要な場合には、切り口にラップをして臭いを拡散しないことにしました。

このような対策をしても、周囲に松枯れがあるので、2ha農場内数千本のうち5~10本程度は松枯れが発症します。被害木は、カミキリが幹から根に移動する前の12月に伐採処分します。これによって、被害拡大を防いでいます。

■ 過酷な掘り取り

硬い岩盤土壌のために、掘り取りは、電動ピック(削岩機)、ツルハシ、鏨とハンマーなどを使用します。

■ 植栽実験

アカマツを個人庭園に植栽する時に、成長が早すぎるのが課題です。

そこで私たちは、霊山などの観察から、路盤に使用する砕石の中にアカマツを植栽して経過を観察することにしました。砕石を選んだのは、どの地域でも入手しやすいからです。水はけをよくするために、径が大きいものが良いと思います。

2021年10月4日に植栽、2023年1月26日現在1年3か月経過しましたが、樹勢は良好です。新芽はほとんど伸びずに、成長を抑制するという目的に対しては大きな成果を上げています。葉性も細かく、柔らかいです。

植栽は2パターンで行いました。

1パターン:底に厚さ30cmの砕石、脇も砕石。                             2パターン:底に30cmの砕石、脇は土壌。

1年3か月では、どちらも違いがありませんが、3年ぐらいまで経過観察していきます。