■天龍寺曹源池庭園   

 日本庭園は、里山を借景にしたり、さらに里山と庭の間にバッファーゾーンとなる「里庭」を設けて、周辺環境との繋がりを大事にしました。
天龍寺曹源寺庭園は、室町時代の様式を伝えると言われている池泉回遊式庭園です。
嵐山と桂川対岸の亀山を借景としています。
前景となる亀山の斜面下部を里庭として、アカマツ、モミジ、野の花を植栽しています。
里庭は、現代の雑木の庭にも応用できる、たくさんのヒントがありそうです。

■詩仙堂

石川丈山が寛永18年(1641)に東山の山麓に造営した山荘。

斜面上方に立つ建物の前庭は白砂、その周辺はツツジの刈り込み。

庭は斜面を降りながら、ししおどしを聞き、次第に里山の懐に入るように回遊します。

自然植生のヤブツバキに繋がるところに春日灯篭を置き、そのあたりから庭に向かってバッファーゾーン。

モミジとその根元に野の花を植えて、里山と庭を繋いでいます。

■足立美術館

1970年前後に、オーナーの足立全康と作庭家中根金作や小島佐一らによって作庭されました。

庭は道路を挟んで、主庭と里庭からなっています。主庭は、白砂とクロマツで横山大観の「白砂青松」を表現しています。その背景にアカマツ。

里庭はアカマツ。剪定の密度を、主庭よりも粗くて、里山のアカマツへ繋いでいます。また里庭のアカマツは、主庭の予備の役割も果たしています。

借景となる里山にも手を加えています。里山は照葉樹林帯ですが、主庭から見える斜面はアカマツを植栽(あるいは選抜)して、軽く剪定しています。

このように、里山、里庭、主庭をアカマツで繋ぎ、それぞれ手入れの頻度を変える作庭思想とその継続は見事です。

■古峯園

岩城亘太郎が、1977年に竣工した大規模な池泉回遊式庭園。

北と西の里山を借景としています。

西の山麓は、モミや雑木を間引き、ヤマツツジを育成して、バッファーゾーン里庭として主庭に繋がっています。

この里庭が主庭に奥行きと柔らかさを付加しています。

■近江庭園

2016年、植芳造園が設計施工。

里山を借景として、主庭との間にコナラを高木層とした雑木類を植栽して、里山から主庭への絶妙なグラデーションを実現しています。

■Blue Briar Cottage and Gardens

USAノースカロライナ州

オーク林の斜面に家と庭を作ったコテージガーデンです。

家の周囲には芝生テラスとその間の斜面に日本原産のモミジや宿根草を植栽したメインガーデン。

周囲のオーク林とメインガーデンの間は、オークを間引いてイロハモミジや日本原産の低木宿根草を植栽してバッファーゾーンとし、ここも回遊させます。

周囲のオーク林や眼下の眺望を借景、メインガーデンからバッファーゾーンを回遊させて、シークエンスを楽しませるなど、日本庭園の構成、真髄が感じられます。

足立美術館を作庭した中根金作がこのガーデンを指導したが、オーナー夫妻も西方寺など京都の庭を訪れて研究しています。

■仙台800坪個人庭園

2023年に仲田種苗園が設計施工した仙台800坪個人庭園では、敷地境界線に、アカマツ、コナラ、アカシデ、アオハダなどの雑木を植栽して、モミジを中心にした日本庭園の背景としました。

里山を演出して、対岸の建物群が直接視野に入ることを緩和しながら、七北田川の川風を和らげます。