石川町歴史文化基本構想策定員会:文化財保護活用部会(部会長 仲田茂司)
私が、これまでにfacebookで報告してきたものをまとめてみた。
■2017年2月
部会の「キックオフ」
長瀬敏郎東北大学准教授によれば、石川町は鉱物にとって「奇跡の地」である。
ペグマタイトはマグマが地球の中から噴出する過程で発生した残液で、それが地表ぎりぎりのところに残るのは天文学的な確率で稀(まれ)なこと。
石川町の鉱物は、日本最大級価値をもつ鉱物産地。
1 鉱物の種類が豊富(155種)
2 鉱物の結晶が巨大
(石英巨晶帯、長石巨晶帯、電気石・石榴石・白雲母帯)
3 希土類元素やレアメタルを主成分とする鉱物の産出
石川町の古民家を「文化の結節点」と評価した中村琢巳東北工業大講師と同様に、学問が地域に勇気を与えてくれる。
■2017年3月
石川町西部:阿武隈川流域(野木沢・沢田地区)
石川町歴史文化構想策定委員会・文化財保存・活用検討部会。
という仰々しい部会だが、実は大学の先生方も含めて、14人の委員に歴史の専門家はいない。
若手女性の獣医さんや、有名旅館の若女将が乳飲み子を抱えながら参画。
鉱物学の東北大学准教授が、「皆さん、自分の中の日本一をさがしましょう」と提案。
「いやー、無茶苦茶楽しい。やったるで」。一応私が、部会長。
■ 2017年4月
石川町中田:古街道調査
84歳の父と80歳の母は、山中の実家で二人暮らし。
現在は限界集落だが、70~80年前までは山街道の要衝、また馬産の拠点であった。
父が最近山街道の復元に情熱を燃やしている。
昨日と今日の2日間、ランドスケープの千葉大学霜田亮祐准教授と三田氏、歴史が専門の石川町教委の角田学係長や佐原学芸員などが、老父の案内をもとに、詳細な学術調査を実施した。
古街道を活用したフットパス(散策路)や乗馬レクリエーションが実現すれば、中山間地の活性化に繋がる。
さらに石川町市街地の桜谷トレイルや母畑温泉トレイルとネットワークすれば、滞在型観光の圧倒的なリソース(地域資源)となる。
昨夜は、母畑トレイルの実現に向けて奮闘している「旅館日本一」八幡屋の渡邉社長や役場で地域づくり担当の水野係長を交えて、熱く、意見交換した。
■2017年6月
石川町市街地調査
石川町の歴史文化を活用する委員会の部会。
東北工業大の中村琢巳先生には、石川市街地の築50年以上の歴史的建造物が、江戸後期から明治、大正を経て昭和初期まで、重層的に街並みを形成していること。また市街地においても、通りごとに特徴があり、歩くごとに変化するシークエンスを楽しめると教えていただいた。各委員の多くは石川町との関係が深いが、今まで見てきた街の風景観が変わった。建物はもちろん、街としての歴史的価値の可能性を感じたと大好評だった。
また石川町とは10年以上の関係がある霜田亮祐千葉大学准教授からは、遠野市での事例紹介があったが、今までの石川町に対する提案を具体化する上での、叱咤激励であろう。
本委員会部会は私が部会長であるが、「若さと多様性」が持ち味で、あえて文化財専門家以外の新進気鋭の大学関係者や地元の若手実業家(女性は最低限2名)に委嘱している。もちろん他の部会は、歴史関係のそうそうたる大学の先生方である。本日も母畑温泉八幡屋の社長と若女将が子連れで参加、またJCいわき石川青年会議所理事長もFacebookで発信してくださっている。
千葉大や東北大など、遠路にも関わらず、10時~16時までのハードなスケジュールに対応していただき、本当にありがとうございまし
■2017年7月
長瀬敏郎東北大学准教授の講演会
福島県石川町は、日本を代表する鉱物の地。東北大学の長瀬敏郎准教授からは、郷土の地球規模的価値を分かりやすく、解説していただいた。
真の学問は、地域に勇気を与える。
■2017年9月
阿武隈山地(石川町中田・山橋調査)
福島県石川町中田地区のササラ。改めて、祭りが地域社会の絆として重要であることに共感した。
石川町歴史文化基本構想策定委員会・活用部会として見学。
石川町は、自由民権運動の東日本の拠点であった。
しかし政治史となると難解で、現在の町民は、民権を身近なものとして感じていない。
そこで石川地方としての民権運動の成果を見るとまずは地域教育で、学塾石陽館が、学法石川高校や県立石川高校の創設に繋がった。
また民権家が、合併前の村々の地域活動の中核となり、学校教育の充実や地域づくりに貢献した。
石川町歴史文化基本構想策定委員会・活用部会11人が、石川町中田の深谷家にお邪魔して、民権家の足跡を伺った。民権家深谷柳蔵の子孫が旧中谷村村長や石川町議会議員となり、地域に貢献した。
■2017年12月
母畑地区の調査
昨日石川町の文化財活用部会を母畑地区で開催した。会場の母畑自治センターは満席の盛況。
午前中は、千葉大学の木下剛准教授が「英国の田園地帯と歩く文化」を講演。
部会のミッションである昼食は、八幡屋で豪華な和定食。
午後は、八幡屋の渡邉社長の案内で、母畑西トレイルを地元の方々と歩いた。
私たちは住民の方々の経験知に多くを学び、また住民からは故郷の良さを再認識できたという喜びの感想をたくさんいただいた。
私たちは、NPOふくしま風景塾の活動と町の部会を連携させ、また千葉大学や八幡屋、JCと協働して、歴史資源を活かすトレイルを開発してきた。昨日は、実用化に向けて、地元の方々と一歩前に進むことができた感謝の一日であった。
■2018年3月
石川町中田区の変成岩
地質やランドスケープなど学界の第一人者、全国的な人気旅館の若女将、女性獣医、青年実業家、地域や行政のまちづくり関係者など、多彩な方々が、文化財を活かした地域づくりに知恵を絞る。
本日、石川町歴史文化基本構想策定委員会文化財保存活用検討部会は、地域的特色が顕著な矢造変成岩を反映した石積みや馬産遺構である養駆場などを視察した。
私はこの部会長だが、併せて主宰するNPOふくしま風景塾と千葉大学が連携しながら、地域資産を巡るトレイルを開発している。文化財は「種まき桜」など他の地域遺産と繋ぐことによって、地域づくりに貢献できる。その点でも散策路(トレイルやフットパス)は重要だ。
6月3日(日)、「中田の郷・人馬ウオークラリー」を開催する。覚悟をもって言えば、歴史を活かした地域づくりには、ビジネス感覚が必要だし、私がその実践者となる。
昼食は、私の実家で。
■ 2018年9月
代表的な地質・地形のドローン撮影(千葉大学霜田准教授)
里山園芸民泊の宿泊第1号は、千葉大学の霜田亮祐准教授。福島県石川町の地質や地形を、ドローン空撮を利用して、2泊3日の調査。石川町のエリア分け概念図(仲田メモ)
2日目夜の飲み会には、地元中田区の廃校利用を進めているグループや古殿町のNPO法人馬事振興会が集まってくれました。
廃校や馬を活かした地域再生の想いや話で、深夜まで盛り上がりました。ビールの他、「獺祭」4合瓶と古殿町の銘酒「純米大吟醸 一歩己(いぶき)」1升瓶を飲み干しました。
85歳の老父は、霜田先生が撮影したドローン映像を繰り返し見ていました。
■2018年10月
長瀬敏郎東北大学准教授の講演会
福島県石川町は、155種の鉱物が発見されている日本屈指の地質の町である。
とくにペグマタイト(巨晶花崗岩)は日本三大産地で、その地質からは大きな長石や石英Quartzが産出する。石英のうち整った分子構造(SIO4)で透明なものが「水晶」(Clear quartz,Rock crystal)で、石川町から産出する水晶は種類が多く、この点でも全国屈指だ。
地質学専門の長瀬敏郎東北大学准教授は、地質や鉱物における石川町の全国的価値をわかりやすく、しかも熱く教えてくださるので、私と地方女子大教員の家内は大ファンだ。本日の講演「水晶の魅力」も感動した。
最後の水晶の写真は、私が2016年に旅したスイスのサースフェー(山岳・スキーリゾート地)の博物館で見つけたものだ。なんとなく石川町との共通するものを感じたが、長瀬先生によればスイス・アルプスからは多種類の水晶が産出し、スイスこそが水晶研究の発祥の地だそうだ。水晶の英語はQuartzクオーツ,そうスイス特産の時計の代名詞だが、もともとは水晶で、そこに電圧を与えると規則的に振動するので時計の核となった。つまり水晶がスイスの伝統産業を築いた。
福島県内の多くのまちづくりを主導し、またご先祖が石川町という関係で我が町のまちづくりを長年気にかけてくださっている方から、「石川町はクリスタル(水晶)のはずだったのに、最近は聞かないね」と寂しげに私に指摘した。
「我が町は何者か、何で勝負するのか」こそが私は大事だと思うが、長瀬先生の講演を聞くたびに、クリスタルこそがまちづくりの核になると確信する。サースフェーなどのスイスのリゾート地と「クリスタル友好都市」を結んで、役場や旅館関係者などとの人的交流すれば、50年前にドイツやスイスを視察して「健康温泉」というビジネスモデルを確立した湯布院とは違った独自の観光が可能となろう。また(国独立法人)産業技術総合研究所と連携して、石川町の地質・鉱物を応用できれば、世界一の技術をもつ日本の人工水晶製造企業を誘致することも可能だ。人口水晶は、パソコンなどIT機器には欠かせない、未来素材だ。
私のような浅学が言うまでもなく、我が町で営業して全国的にも評価される旅館経営者が、長瀬先生の講演を熱心に聞いていた。
■ 2018年11月
国際ワークショップと関連した変成岩調査
地質学では日本を代表する師弟の蟹澤聡史東北大学名誉教授と長瀬敏郎同大准教授に、福島県石川町中田区の変成岩について調査、分かりやすく解説していただいた。両先生によれば、中田の変成岩は学術的に重要な価値があるという。
また地質と地形の関係など、ランドスケープにつながる重要な鍵を教えていただいた。
さらに私たちが千葉大学や地元と進めている「中田トレイル」についても大いに賛同していただき、勇気をいただいた。
地域資源に絶対的価値というものは少なく、それを掘り出し、活かそうという思想とアクションが重要だ。
私の実家の「里山園芸民泊」がその拠点になりつつある。
■ 蟹澤聡史先生のfacebook(2018年11月12日公開)から
含蓄のあるお言葉、写真も蟹澤先生が撮影したもの
ガラパゴス人間のつぶやき 701 石の町
秋深し幾何学模様の石の町
何十年ぶりかで福島県石川町を訪れた。ペグマタイトで有名な石の町。近くの雲母片岩を切りだして矢羽積みの石垣が見事だった。町役場のシンボルもペグマタイト。石の好きな地元の方々との交流も楽しい一時。
ガラパゴス人間のつぶやき 702 石の町 2
里山に旧き俤見ゆる秋
山径に三原色の秋日和
昨日行った石川町、山径の道路際にこんな岩石園がある。地元の人たちが造った子供たちへの贈りものだろう。黒雲母片岩、蛇紋岩、安山岩など。最後に訪れた神社の狛犬は白河石らしい。もう一度ゆっくり観てみたいところ。昼食に立ち寄った民家の近くにあった紅葉は赤と黄色と空の青。日本の原風景がこゝにあった。