1 屋久島の主要な杉

●縄文杉

2012年7月18日、私は淀川登山口から宮浦岳を縦走し、新高塚小屋に宿泊。ひどい土砂降りで登山者は少なく、私のほかに1パーティのみ。

次の早朝に、縄文杉を見たが、30分は誰もいなくて、満喫できました。

●ウイルソン株

400年ほど前、島津藩政時代に伐採された切り株といわれています。中は大きな空洞になっており、清らかな泉が湧きだし、小さな流れをつくっています。根際には三本の小杉が育っており、巨木が伐採されたあとに次世代の杉が育つ「切り株更新」の模様を呈しています。大正時代に屋久杉を調査し、この大株を世に広く紹介したアメリカの植物学者、ウィルソン博士にちなんでこの名が付けられました。(「かごしまの旅」より)

●紀元杉

標高約1,200メートルの安房林道沿いにあり、樹高19.5メートル、胸高周囲8.1メートル

着生植物

ツガ、ヒノキ、ヤマグルマ、ヤクシマシャクナゲ、アセビ、サクラツツジ、ヒカゲツツジ、ナナカマド、ユズリハ、トカライヌツゲ、シキミ、ミヤマシキミの12種

●七本杉

白谷雲水峡、標高836m。樹高35.8m、胸高周囲8.3m。

2 地質

屋久島の90%は花崗岩です。

花崗岩の割れ方は、一般的には柱状節理といい、サイコロ状となります。

屋久島では、さらに激しい侵食によって、角が取れて、羊羹を切ったようになったり、一部が転げたりして、多様な景観を形成します。

3 植生の垂直分布

(環境省 日本の世界自然遺産 屋久島より)

●海岸付近の亜熱帯植生。

海岸付近は亜熱帯、標高1000mまでは照葉樹林帯、標高600から1800mはスギ樹林帯、標高1800mの頂上付近は森林限界からヤクシマダケ草原帯。

登るごとに、植生が変化するダイナズムを体験できます。

大川の滝

マングローブの仲間メヒルギ

へゴ(シダの木)

ガジュマル

● 淀川登山口

ヒメシャラ

ヒカゲツツジ

ハイノキ

●花之江河

花之江河は標高1640m、日本最南端の高層湿原です。

周辺の樹木は、スギと常緑のヤマグルマ。

ヤマグルマは、最初はスギに着生して、成長とともにスギを枯らす「締め殺し」の異名を持ちます。

ヤマグルマは、シダや針葉樹と同じ仮道管で、紙のようにジワジワ水を吸い上げるので、幹内凍結が起きにくいので、高山でも生育できます。

これに対して広葉樹は、水道管のような道管で水を吸い上げるので、極寒では凍結して、枯れます。

標高1700mを超えると、スギも少なくなり、ヤクシマシャクナゲなどの低木林となります。

高層湿原

ヤマグルマと杉

ヤマグルマ

森林限界のヤクシマシャクナゲなどの低木林

●黒味岳山頂付近

標高1700mを超え、スギなどの高木がなくなると、低木林の森林限界。

まずヤクシマミツバツツジに目を奪われます。

さらに標高1831mの黒味岳山頂付近は、花崗岩露頭にヤクシマシャクナゲやアセビなどの低木が群生する、まさに天空の楽園です。

ヤクシマミツバツツジ

ヤクシマシャクナゲ

4 白谷雲水峡

●苔むす森、標高600から860m。

ホソバタブ、イヌガシ、ヤマモモなどの照葉樹とスギの混交林。

もののけ姫のシシ神の森のモデルとされています。

もののけ姫のエンデングは、人間が破壊した森を再生して、森と人間が共生する社会を目指しています。

人間によって切り倒されたスギを栄養源とした照葉樹実生苗の発芽と成長が、蘇る森を象徴しています。

「古くから信仰の対象であった奥山に育つ屋久杉を伐採することはありませんでした。

 しかし、島津氏が強大になり、さらに天下統一がすすめられる時代になると、特別な建築のために屋久杉が伐採されるようになりました。五百年余り前と推定される切り株が確認されています。

 また、秀吉の京都方広寺の建築材を調達するため、島津氏の重臣が調査に来島した記録も残されています。

屋久杉の利用をねらいとして屋久島支配を強めた島津氏は、江戸初期に屋久杉材を年貢などに定め、支配体制を確立しました。

 この時代に藩財政の安定と島民の生活向上を願って、提言したのが安房生まれの儒学者 泊如竹です。

 以来、幕末までに5~7割もの屋久杉が伐採されたと推定されています。その跡には小杉と呼ばれている若い屋久杉が誕生して、現在に受けつがれています」。

(屋久島・屋久杉資料館ホームページより)

樹上に着生するサクラツツジ

●花崗岩渓流とサツキツツジ

花崗岩の摂理を流れる渓流

5  森の再生

(1)倒木(実生)更新、切株(実生)更新

人間によって伐採されたり、風は虫害による倒木が腐食すると、幹は実生苗の養分を提供する培地なります(倒木更新。

また屋久杉は戦国時代から島津藩によって伐採されて、その大きな切株も実生苗の培地となります(切株更新)。

大きな樹木が倒木や伐採されると100㎡くらいの空間ができ、それを植生学ではギャップというが、実生苗に陽があたり、成長を促します。

白谷雲水峡の苔むす森は、ハウス内のような空中湿度があるので、倒木更新や切株更新が活発です。

倒木更新

切株更新

(2)萌芽更新

ひこばえは、木の根元にある休眠芽(定芽)が起きだして生える芽で、水分や養分の吸収力が高く成長が速いのが特徴です。ひこばえが成長して新たな木に育つことを「萌芽更新」と言います。萌芽更新も、伐採ギャップ(空間)によって、陽が供給されます。

(3)樹上着生から樹種交代

紀元杉には12種、七本杉には8種の樹木が着生して、森を作っています。屋久島は年間雨量が4000ミリを超えるために、樹上でも樹木に必要な水分が得られます。また樹上は陽が当たることも重要な要素です。ヤマグルマは、まず杉の樹上に着生して、その後幹の腐食部を伝って地下に根を下ろし、最後は親の杉を枯らします。

6  草屋根はアニメだ

2002年、仲田種苗園は作庭家高荷俊峰さん、造園家田瀬理夫さん、アクアソイルの池上靖幸さんにお声がけいただき、スタジオジブリのスタッフ用アトリエの草屋根にアゼターフを納品しました。

アゼターフは、野の花マットのプロトタイプでイネ科を含みます。

宮崎俊さんは、この草屋根に毎日登り、「まるでアニメの世界だ」と喜んでいたそうです。